脳神経外科 診療内容

診療・各部門

1.脳卒中に対する急性期治療

脳血管の破綻によるクモ膜下出血・脳内出血や、血管が詰まって起こる脳梗塞は、治療開始に一刻を争う疾患です。当院では、神経内科スタッフとともに、24時間体制で「脳卒中オンコール」体制を敷いており、緊急で血栓溶解療法(t-PA静注療法)、脳血管造影(カテーテル検査)を含む種々の検査、開頭手術、カテーテル治療を実施することができます。とくに、2017年度に血管撮影装置が増設され、院内に2台となり、緊急カテーテル手術がスムーズに実施されるようになっております。

〇脳梗塞

①t-PA静注療法

脳梗塞発症後、超急性期(4.5時間以内に治療可能)で条件を満たせば、t-PAによる血栓溶解療法を行います。

②血栓回収療法

脳梗塞発症後に、t-PA治療の有無に関わらず、主幹動脈が閉塞あるいは高度狭窄が残った場合、条件を満たせば、吸引カテーテルや回収型ステントを用いた血栓回収療法を行っています。

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左:脳主幹動脈が閉塞している(矢印)、中:ステント型レトリーバーで除去された血栓、右:閉塞していた血管は再開通している(矢頭)

〇くも膜下出血

CTあるいはMRI検査でくも膜下出血が認められれば、ただちに血管検査で出血源である動脈瘤を精査し、確認されれば、治療に移ります。再出血予防の治療手技としては、動脈瘤の部位、形状、サイズ、患者の状態を考慮して、コイル塞栓術クリッピング術かを選択します。その後は、くも膜下出血の続発症である脳血管攣縮、水頭症に対する治療を行います。

〇脳出血

大きく意識障害を伴う脳出血では、手術適応を検討します。主に、内視鏡とナビゲーションを用いて低侵襲の血腫除去術を行っています。血腫がかなり大きい場合や、血管奇形や腫瘍からの出血の場合には開頭血腫除去術を行っています。

2.脳卒中の予防的治療

脳卒中の発生を事前に予防する治療にも力を注いでいます。出血であっても梗塞であっても脳卒中はいったん発症してしまうと、後遺症を残してしまうことが多いからです。たとえば、数ミリ以上のサイズで形状の不整な脳動脈瘤、無症候性の70-80%以上の高度な頸動脈狭窄などが、外科的治療を検討すべき病態です。ただ、実際の手術法もふくめた適応判断には、各々の患者様の年齢、既往歴、関連する臓器疾患の治療歴などを考慮に入れて慎重に検討させていただいております。

〇脳動脈瘤

脳動脈瘤の発生部位、形状、サイズ、患者様の状態を考慮して、コイル塞栓術(図参照)クリッピング術(図参照)かを選択します。最近では、比較的サイズの大きい広い頸部の動脈瘤に対してコイル塞栓術を行う場合には動脈瘤用の頭蓋内ステントを用いるケースが増えてきております。

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脳動脈瘤に対するコイル塞栓術.左:術前の動脈瘤(矢印)、右:コイル塞栓術後(矢頭)
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脳動脈瘤に対するクリッピング.左:術前の動脈瘤(矢印)、右:術後のクリップ(矢頭)

〇頸動脈狭窄

無症候性の高度狭窄あるいは症候性の中等度狭窄以上では原則的に外科的治療を検討します。また、検査で狭窄の進行が認められる場合は、高度狭窄に至る前に治療をお勧めすることもあります。手術法としては局所麻酔で行う頸動脈ステント術(図参照)と全身麻酔で行う頸動脈内膜剥離術(図参照)があります。動脈硬化は全身性の疾患ですので、事前に十分に検査させていただき、全体的な手術リスクを考慮の上で、手術法を含めて検討いたします。

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頸動脈狭窄に対するステント留置術.左:術前狭窄(矢頭)、中:留置されたステント(矢印)、右:ステント術後(矢頭)
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頸動脈狭窄に対する内膜剥離術.左:術前狭窄(矢印)、中:手術で摘出された動脈硬化プラーク、右:術後の狭窄の消失(矢頭)

3.脳腫瘍の治療

脳腫瘍についても、髄膜腫、下垂体腫瘍、聴神経鞘腫、神経膠腫などの治療を行っております。頭蓋内腫瘍に対しては、先進的医療機器であるニューロナビゲーション(図参照)を早くから取り入れており、先般、より広い状況で使用できる磁場式も備えた型にバージョンアップしました。また、神経膠腫の手術において、従来、残存腫瘍の同定が困難であったのが、最新鋭の顕微鏡(図参照)の導入によって蛍光顕微鏡―5ALA法により同定可能となり、実績を上げつつあります。また、2017年度よりオリンパス社製の支持装置エンドアームをふくめた脳内視鏡システム(図参照)を導入しました。神経内視鏡学会技術認定医が在籍しており、特に下垂体腫瘍では安全で確実な手術が可能となっています。

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左:ステルスナビゲーションシステムS7、中:ナビゲーションを用いた手術での計画例、右:最新鋭の手術顕微鏡(カールツァイスPENTERO900)
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左:脳内視鏡システム(オリンパス社製エンドアーム)、右:同システムの内視鏡プローブ

4.頭部外傷

頭部外傷に伴う急性硬膜下出血、急性硬膜外出血、慢性硬膜下血腫など外傷性頭蓋内出血の治療を行っております。

5.顔面けいれん、三叉神経痛

顔の半分がぴくぴく勝手に動く病気(顔面けいれん)や顔の半分が急に激しく痛む病気(三叉神経痛)は、頭の中で血管が神経を圧迫することで起こります。これらは開頭手術で圧迫している血管を移動させて神経を除圧することで大部分が症状が改善します(神経血管減圧術)。当科では手術の安全性と確実性を高めるためモニタリングを駆使し、整容面に配慮した手術を行っています。手術以外の治療法(投薬やボトックス治療、ブロック注射など)もあり、患者様の希望に応じて治療法を決定します。ご病気でお悩みの方は一度ご相談ください。

6.機能的脳疾患とくに脳卒中後遺症による難治性疼痛と筋痙縮について

当院では、脳卒中にかかられた患者様のなかで、以下のようなことで悩まれる方に対し、外来で対応させていただいております。「脳卒中後に手足のつっぱり(痙縮)や痛み(中枢性疼痛)などの後遺症で苦しんでいる」という悩みを持っておられる患者様あるいはご家族は脳神経外科外来にご相談下さい。これらの症状に対して、精密検査を行ったうえで、症状に対する緩和治療として薬剤治療、ボトックス治療脊髄硬膜外刺激療法を検討させていただきます。すでに、かかりつけの医師がいらっしゃれば、かかりつけ医からの紹介いただければ診療がスムーズにすすみます。
とくに脊髄硬膜外刺激療法は、脳卒中以外の原因による難治性疼痛たとえば閉塞性動脈硬化症、脊柱管狭窄症、帯状疱疹後などによる疼痛で従来の薬物・手術的治療で効果が認められないものにも有効なことがあります。
また、これらの専門的治療を行った場合、治療に並行してリハビリテーションが極めて重要です。当院では、認定理学療法士(脳卒中)が在籍しており、入院治療時において、より専門的なリハビリテーションが行える環境にあります。


セカンドオピニオン予防接種外来専門外来各部門・関連施設看護部訪問看護ステーション
薬剤部健康管理センター健康管理センター(ハーバーランド)介護老人保健施設